資生堂 グローバル標準化によるビジネストランスフォーメーション プロジェクト 「FOCUS SJ Wave1」 リリース!奮闘記
資生堂ではグローバルビジネス変革プロジェクト「FOCUS(First One Connected and Unified Shiseido)」を推進中です。基幹業務プロセスを全世界でSAP S4/HANAに統合する壮大なプロジェクト。私たち資生堂インタラクティブビューティー(以下、SIB)も、業務部門と一体となって、着々と日本国内の基幹システム刷新に取り組んでいます。
このnoteでも日本初導入の輸出物流業務"JDC (Japan Distribution Center)"
への導入をリポートしました。昨年10 月には資生堂ジャパン 北海道エリアの販売・物流業務にも導入完了しています(FOCUS SJ Wave1)。
今回、ITキーマンであるIT本部 ITソリューション部 マネージャーの石澤 匡史さんと、業務部門キーマンの資生堂ジャパン株式会社 事業マネジメント部 マネージャーの内海 恵さんに、「FOCUS SJ Wave1 ~ 北海道エリア導入」プロジェクトの苦労や裏話を伺いました。
まず、自己紹介をお願いします!
石澤さん(以下、石):2005年に資生堂に入社しました。北海道、神奈川と3年ずつ営業をしていました。一度、異動希望の隅のほうにITと書いたせいか、2010年に当時の資生堂情報企画部に異動になったんです。営業からITへ突然の異動だったので、当初は何もわからない状態で大変でしたね(笑)。そこからずっと販売物流まわりのシステムを担当しています。今回、FOCUS SJ Wave1でも販売物流領域のITリードを担当しています。
内海さん(以下、内):私は石澤さんと同期入社なんです。7年ほど首都圏エリアの営業をしていました。その後、資生堂ジャパンでは「横断部門」と呼ばれる領域ですが、社内向けにマーケティング情報の発信や情報管理、ブランドの販促物運用の業務に携わっていました。横断部門の特長でもありますが、そこではロジスティクスやマーケティングなど様々な部門の方とお仕事をしていました。
21年7月からはFOCUSプロジェクトに加わり、主に物流センターや商品センターの在庫管理や出荷管理の業務領域のチームリードを担当しています。
FOCUS SJ Wave1プロジェクトとは何でしょうか?
石:資生堂ジャパンには日本全国に7カ所の商品センター、いわゆる出荷拠点があります。そのうちの1カ所の北海道エリアで、グローバル基幹システムFOCUSを稼働させようというのが、FOCUS SJ Wave1です。
北海道商品センターで行っている得意先受注や出荷指図などのオペレーション全てを既存の仕組みからFOCUSに移行し、業務部門の社員全員がFOCUSに向かって仕事できるようにするというのが全容です。
内:資生堂ジャパンのビジネスはとても複雑なので、国内へのFOCUS導入については、リスクを抑えるためWave1/Wave2と2段階にリリースを分けています。Wave1の北海道エリア導入は全国展開に向けたパイロット展開の位置づけです。今は全国の残り6カ所の商品センターと東西の物流センターに展開するWave2のプロジェクトを推進しています。
資生堂ジャパンでは2020年にFOCUSのためのプロジェクトGが立ち上がりました。そこからメンバーがどんどんアサインされて、私がジョインしたのが2021年7月。このWave1のローンチが昨年10月ですので、私にとっては2年越しの念願のパイロット展開の稼働を迎えることができました。
難しかったこと、苦労したことを教えてください
石:国内の化粧品ビジネスがとにかく複雑ということです。
資生堂ジャパンには本当に多くのお得意先さまがいらっしゃって、その系列単位で取引条件や物流の要件も異なります。お取引先さまの業務にマッチしたかたちで、必要なデータ授受や商品を送る必要があるのです。
一方、FOCUSには資生堂グローバルで必要な標準データを取り込む必要があります。そこで、お取引さまごとに異なるデータを、標準データに変換し送り込む仕組みを構築したのですが、パターンの網羅がとにかく大変でした。
内:グローバルの全社プロジェクトですので、バックグラウンドの異なるメンバーがたくさん集まってチームを組んで進めています。それ自体がおそらく資生堂ジャパンとして過去にないスケールで、大きなチャレンジと感じています。意思疎通や考え方の目合わせから始まり、案件や課題ごとにロジスティクスや横断部門、営業部門、グローバルメンバーの所属する本社部門など多くの部門との協業になります。
また、FOCUSプロジェクトでは、標準の業務プロセス、システム構築のメソドロジーや承認プロセスも決まっています。その制約の中で、資生堂ジャパンリージョンで成り立つプロセスやシステムでないといけません。日本のビジネスの複雑性を踏まえて、これらのタスクをこなしていくのは、本当に難易度が高いと思いました。この推進プロセスも大きな大きなチャレンジですね。
グローバルプロジェクトならではのチャレンジも・・・
石:国内導入とはいえグローバルプロジェクトなので、本社側のスタッフには各国のメンバーがいます。グローバル標準に合わせる一方で、資生堂ジャパンのビジネス特性を本社のグローバルメンバーに伝えることも常に意識しています。日本のビジネスのあるべき姿をとらえて、グローバル標準に取り込めないかといった調整もしています。
内:資生堂ジャパンにとって当たり前のことでも、グローバルで
は当たり前ではないことがあります。日本事業へのインパクトを整理して、ロジカルに本社側のグローバルメンバーに伝えることが大事と思いました。
私たちが今まで当たり前と思っていたことをロジカルに見える化することで、資生堂ジャパン側のメンバーも思考が変わっていきましたね。どこが合理化できるのか、どこがグローバル標準に合わせられるのか、どこが資生堂ジャパンとして独自投資しないといけないか、といった点が徐々に見えるようになりました。
石:例えば、営業レポートはグローバル標準機能を使うことになりました。現場としては慣れ親しんだ従来の簡潔なフォーマットがよかったのですが、グローバル標準機能も十分使えるといった理解が得られました。コードや会計処理の考え方も標準に合わせて変更するといったことも関係部門と調整できています。
ITとしては基幹システムの切り替えになり、現場が慣れ親しんだものを変える、ということになります。最初は大きな心理的抵抗を受けますので、どうやって同じ方向を向いてもらうかというのも大事です。関係性を1つ1つステップ踏んで作っていった感じがします。最終的には一体感を構築して本番を迎えられたと思っています。
いよいよ本番当日、どのような気持ちでしたか?
石:2023年10月2日、本番一発目の出荷バッチがかかってデータが流れたところの確認で、小さなトラブルが起きたのですが、結果1日目が終わって、当日の指図件数と出荷件数が合ったのを確認できたときは「あー、よかったよかった」と、本当にホッとしました。
内:私は札幌の現地で稼働を迎えました。システムのみなさん中心に調整に調整を重ねていて、見守ることしかできない私においても緊張感は相当なものでした。この時ばかりは自社問わず所属は関係ないですね。汐留と札幌間をTeamsで終日繋いでOne teamで対応していました。
ただ今回は北海道だけなので、単純な喜びというよりは次(Wave2)どうしようみたいなことを、やはり考えてましたね(笑)。
今後の抱負を聞かせてください!
石:今はWave2 のことしか頭にないですね。とにかくFOCUS導入のコンプリートです。Wave1は北海道だけでしたが、全国だと相当な規模になります。その点、Wave1でパイロットとして経験ができたのはよかったですね。
これから焦らないといけない部分もありますが、焦ってもしょうがない、目の前のことを1個1個片づけるのがやはり最短の近道と考えています。なので、きちんと議論した結果で進めていきたいです。
内:このプロジェクトで学んだのは、常に「全社最適」視点で、ということです。これまでは資生堂ジャパン最適で見ていればよかったのが、常にグローバル全体最適を求められました。これってこれまでのことを考えると特殊だと思うんです。グローバル全社視点をいち早く経験できたのは、個人としても組織としても大きなメリットと感じています。この全体最適の感覚やスキルは、どこの仕事でも生かしていけると思います!