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資生堂 お客さま中心のCRMとパーソナライズ事例

資生堂では各ブランドやオンラインショップから、様々なメッセージ、CRMを配信しています。皆さんにも企業やオンラインショップなどから、メールやLINE通知がたくさん届いていると思いますが、開封しないことも多いですよね。メッセージ配信は、お客さまとの関係性に着目したCRM(顧客管理)の取り組みの1つとして実施していますが、時としてお客さまとのエンゲージメントを下げる場合もあります。
今回は、エンゲージメント向上のために取り組んでいるCRMやパーソナライズ施策を紹介します。資生堂のCRMやメッセージ配信に少しでも興味を持っていただけると嬉しいです。


お客さまを中心に据えた資生堂のCRM事例

資生堂では、お客さまの購買履歴や美容部員との応対履歴などを管理し、再来店時やオンライン上で自然なアプローチができるよう心がけています。概念図は以下になります。

資生堂CRMイメージ

このように、CRMを活用して、店頭とオンラインの接点の分断をなくす、いわばシームレスな体験を作り上げることを目指しています。
また資生堂では、ブランドごとのCRMと資生堂ブランド横断のCRMの2種類を利用しています。

ブランドCRMと資生堂ブランド横断CRMの内容例

お客さまにとって2種類のアプローチがありますが、回数やタイミング、内容などを調整し、お客さまに不快感を与えずに役立つメッセージを配信する仕組みを構築しています。

パーソナライズ事例:パーソナライズレポート

資生堂ブランド横断のCRMを活用した施策の一つである「パーソナライズレポート」についてご紹介します。パーソナライズレポートは、お客さまの肌特性や状態に基づいて、季節ごとの肌ケアのポイントを理解いただき、適切なケアを促進することを目的としています。毎月月初にシーズナルレポートを送信し、お客さまが肌パシャ※Beauty Keyアプリより実施(肌パシャの詳細はこちら)で現在の肌状態を測定した後、個別にパーソナライズされたアドバイスをメールで提供します。

パーソナライズレポート配信までの流れ

肌パシャでは、肌の潤いや透明度、ハリ、シミ、シワ、ほうれい線の状態を知ることができます。季節ごとに必要なお手入れのポイントが異なるので、季節とお客さまの肌状態に合わせて、ぴったりのお手入れ方法をパーソナライズレポートでアドバイスします。以下は9月のパーソナライズレポートで、紫外線の影響とシミ指数の結果から、シミ予防ケアのアドバイスとなっています。

9月パーソナライズレポート例

お客さまに適切な情報を提供することに加え、継続的な肌の状態のチェックにパーソナライズレポートを活用いただきたいと思っています。お客さまが定期的にお肌の状態を把握し、データとして管理しておくことで適切なケアのアドバイスに繋がります。

今後の方向性・取り組むべき課題

取組事例でご紹介したように、CRMはお客さまとの関係性をマネジメントすることであり、お客さまの特徴を理解し、エンゲージメントを向上させることが一番大事だと考えています。
今後検討すべきポイントは、主に3つです。
1点目は、資生堂のCRMはブランドCRMと資生堂ブランド横断CRMがあるため、互いに連携し、お客さまの美容体験を最大化する方法を検討することです。例えば1つのブランドのみの愛用者に対して、他のブランドの中にも自分に合うものがあるという新しい発見を提供できる可能性があります。
2点目は、横断的なデータ利用とデータ拡充です。例えば今回紹介したパーソナライズレポートでは肌の測定結果を利用しましたが、資生堂は他にも様々な肌関連データを持っています。店頭機器での詳細な肌データDNAによる肌の特性データなどを活用することで、お客さまへの提供価値はさらに向上すると考えています。
最後3点目は、アプローチ方法の進化です。これまで、メールやLINE、アプリなどを利用し、メッセージを一方的に配信することが多かったと思いますが、生成AIの実用化により、高精度な対話が簡単に実現できるようになりました。資生堂では、お客さまに寄り添ったコミュニケーションを重視しており、双方向のコミュニケーションが非常に重要だと考えています。
今後もCRMやパーソナライズの向上、お客さまに役に立つ情報や新しい体験の提供を行っていきたいと考えていますので、引き続きご期待ください。

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中尾 索也(なかお さくや)
資生堂インタラクティブビューティー株式会社 DX本部 デジタル戦略部 データ・CRM推進グループ 所属。SIer、デジタルマーケティング会社、食品メーカーを経て現職。システム開発から、DX戦略・新規事業開発・デジタルマーケティング・AI開発・データマネジメントを経験。
資生堂インタラクティブビューティーではBeauty DNA Programのビジネス設計やシステム開発等の全体推進と、肌分析データ活用戦略と実行推進(生成AI活用)や肌パシャ等のコンテンツ改善・新規コンテンツ開発を担当。現在は、資生堂ジャパンのデータ活用戦略検討やデータ基盤構築を担当。