資生堂グローバルビジネス変革プロジェクト「FOCUS」。日本導入成功のキーマンに聞く!
資生堂は2020年からグローバルビジネス変革プロジェクト「FOCUS(First One Connected and United Shiseido)」を推進しています。販売、物流、財務、経理、製造など、社内の基幹業務プロセスをグローバルに標準化し、システムをSAP S4/HANAに統合するという、他に類を見ない壮大なプロジェクト。基幹となるSAPは、アメリカ、APAC(資生堂アジアパシフィック地域本社)、中国と順次導入され、今年の5月には日本の物流業務(JDC(Japan Distribution Center))にも導入されました。
このプロジェクトでは、私たち資生堂インタラクティブビューティー(以下、SIB)のメンバーもたくさん活躍しています。
そこで今回は、5月のJDC導入に関わったキーマン、IT本部 ビジネスシステム部 販売物流グループの矢島宇生さん、瀧口麻衣さんに、その苦労(!)とやりがい、醍醐味をIT本部 大井が伺いました。
―それではまず初めに、それぞれ自己紹介をお願いします!
矢島さん(以下、矢):私は新卒で資生堂に入社し、大型汎用機のプログラマーから、システムエンジニア、プロジェクトのマネジメントとキャリアを積んできました。たまに事業部門にも異動しましたが、ほぼ100%社内ITの仕事です。過去にはEMEA(資生堂 欧州地域本社)のSAP導入の責任者やアメリカのSAP導入にも関わりました。今は定年再雇用で、またプロジェクトのマネジメントです(笑)。
瀧口さん(以下、瀧):私はSIBに中途入社して1年半になります。前職ではIT系SIerでWMS(Warehouse Management System)をメインにやっていました。このFOCUSプロジェクトでは、輸出領域の倉庫系のところやシステム間連携を担当しています。前職もWMSパッケージの担当部門で、提案・導入・保守・開発に携わっていたので、WMS歴が1番長いです。
-FOCUS JDCの概要を教えてください。
矢:資生堂の日本の本社をハブとした輸出入の業務に関して、業務改革を行い、全社共通のFOCUSシステムに変えていくというのが、FOCUS JDCの概要です。
ITの視点でいうと、今までの輸出入の仕組みは、以前導入したSAP ECCの仕組みを中心に、そこを取り巻く周辺のシステムで出来上がっていて複雑でした。それをS4/HANAに統合し、周辺のシステムで不要なものはやめるというものです。
業務の視点では、S4/HANAの中で業務が標準化され、資生堂が国内外で同じ仕組みで動いているという形を作っていく感じですね。
-資生堂の社運がかかったプロジェクトです。どんな苦労がありました?
瀧:そうですね。プロジェクトがとにかく大きくて。業務の人がいて、アプリだけでなく、インフラもいて、お客さま窓口の人やオフショアの方も…。
最初にプロジェクトに入った時は、役割はどうなっているのか、どういうチームで動いているのか、オフショアの方の窓口は誰なのか、理解するのにとにかく時間がかかりました。でもそこを理解していないと、一緒にやっているベンダーさんに指示したつもりが、全く動いてくれないみたいなことになりかねない。
また、担当者を探し回った結果、担当者がいなかった、ということもありました。三遊間になっているんです。そういう時は、エスカレーションして…というように、とにかくどんどん深掘っていくしかない(笑)。そこが大変でしたね。
矢:人数はSIBの社員が5人かな。ベンダーさんが40人、オフショアに40人。業務側もエンドユーザー含めて100人ぐらいです。日本をハブと言っても、その先にはアメリカやヨーロッパがあるので…。生産や出荷など、その関係先の規模を考えると、日本の物流拠点の大きさは特出しています。
瀧:でも、どの会社であっても、こんな感じで泥臭いと思うんですよ。みんなで助け合い、どうすればいいですかって、いろんな人に聞きまくって、何とか道を作るしかないですね(笑)。
-それは大変だ。。。それでも切り抜けて、無事本番を迎えたわけですよね。
瀧:大変でしたけど、なぜかみんな頑張っていました(笑)。誰かがラクしていたわけでもなく、ユーザーもベンダーさんも私たちも頑張った。もうみんなで苦労していましたね。
特に本番が近くなって、プロジェクトルームができて、そこに集まったら、もう苦労どころではないですよね。みんなで「大変だね」って言いながら、でも笑いながら。ベンダーさんも業務部門の方もかなり仲良くなっていました。
矢:最後の3か月、そして5月8日の本番後もしばらくは死に物狂いでしたね。業務を動かすために最後のバグ潰しをずっと行っていました。お互いに支え合っていました(笑)。出荷が動き出した時は、本当に嬉しかったです。
瀧:UAT(User Acceptance Test)やハイパーケア期間中は、プロジェクトルームが駆け込み寺になり、ユーザーさんもベンダーさんも来ていました。そこで頑張ったおかげで、今もお互い聞きやすい関係になっています。
矢:今回の導入対象は出荷業務なので、目に見えてドラスティックに大きく何かが変わるってことは無いんですよ。
それでも出荷管理でクリティカルな危険物と一般品の区分け管理が非常に効率化できる。出荷、出荷指図、出荷アレンジメントといった業務も効率化できて、外注費も削減できる。
また新しい倉庫の展開が早く進むといった、目に見えないところで、業務面でもいろいろと良い効果が出てきました。
―これから挑戦したいことは何ですか??
瀧:私はずっと倉庫系のITに携わってきました。SIBに入社してからは、SIerの時とは違って、業務部門の方が何をやっているか、本当によく分かる。そこはすごく勉強になります。
そういう業務系に近いところ、販売物流全般という感じで、幅広く挑戦できればと思っています。あとは海外導入にも携わってみたいという思いがあります。海外行けたらいいな(笑)。
それから業務プロセスのところも。SIBの社員は業務のことをよくご存じじゃないですか。システムも業務も分かっているので、プロセス設計とか社内コンサルみたいな感じもいいですね。
矢:私は2つかな。1つは今のFOCUS導入によるプロフィットをきちっと取ること。運用を安定化させて、きちっとコスト削減を達成させたいです。ITのコスト削減もそうですが、業務効率も含めて。
もう1つは口幅ったい言い方ですが、後進の育成指導といったところです。背中を見せているだけじゃなくて、こう向き合って、引っ張って、バトンを渡すみたいなところですね。
瀧口さんを見ていると、努力家だし、きちんと結果を出すし、分からなければ臆せず聞いてくる。1人でやっていても信頼できる仲間だなと感じています。
瀧:矢島さんは本当にすごい方です。何でしょう、グローバル感覚もあるし、堅実なところもある。私が言うのもアレですが、グローバルな方って、なんかざっくりした感じがあるんですけど、堅実というか、なんか両方持っている方だなと思って。海外のキャリアも見習いたいし、いろいろと教えてもらおうと思っています!
―とても有意義なお話、ありがとうございました!