資生堂のDNA検査・カウンセリングサービスを本格リリースしました<前編>
皆さま初めまして! 資生堂インタラクティブビューティーの吉川です。
私がPdM(プロダクトマネージャー)をしている、DNA検査・カウンセリングサービス「Beauty DNA Program」が、2023年7月21日に本格展開を開始します。
このサービス、いろんな困難を乗り越えながら何とか本格リリースまでこぎ着けたので、その開発経緯や感じたことなど、裏話的なことも含めご紹介しようと思います。
コロナ禍で、もがきながら考えていた
時は、3年前の2020年に遡ります。ちょうど新型コロナウィルスが発生し、緊急事態宣言が出されていたころです。資生堂に限らず化粧品メーカーは苦しみ、もがいていました。外出が制限され、ほとんど人に会わなくなり、会う時もマスクを着ける必要がある。化粧品店も休業となり、開いていたとしてもテスターが撤去されている。こんな状況では、メイクのモチベーションが上がりません。
一方で、おうち時間が増え、自分を見つめ直す機会も増えました。毎日何時間もオンライン会議の画面上に映る自分の顔を見ていると、肌だけでなく内面への意識が高まっていきます。
自身をより理解したことで、「自分に合ったものを」というパーソナライズのニーズが高まりました。健康をより総合的にとらえた「ウェルネス」が注目され出し、資生堂もそのVisionとして「PERSONAL BEAUTY WELLNESS COMPANY」を掲げていました。
そこで、ウェルネス領域のパーソナライズサービスができないか?と考えたわけです。150年間、人のしあわせを願い、美の可能性を広げ、新たな価値の発見と創造を行ってきた資生堂。我々ががやるべきことは、このようなサービスを通じて、心身ともに美しく健やかな未来へ導く、そのサポートをすることであると。
研究所で見つけた"種"
シーズとなる技術がないか?資生堂の研究所「Global Innovation Center」に探しに行ったところ、ありましたよ!すごいのが!
肌だけでなく、血管、ホルモン、栄養とDNAの関係を、2013年から地道に研究し、唾液のDNAを調べるだけで、生まれ持った肌の特徴や取るべき栄養素がわかるAIをすでに開発していたのです!
素晴らしい先見の明!さすが!
DNAを知る意味・価値
研究所の研究成果を聞き、直感的に「すごいパーソナライズサービスができる!」と感じましたが、そもそもDNAー先天的な肌の特徴ーを知る意味や価値って何なのでしょう?
現在の肌状態(お店にある肌分析機器や最近はスマホアプリでも調べることができます)は、主に「DNA」と「これまでの行動(喫煙、紫外線、食事、運動etc.)」で決まります。
例えば、「現在の肌のうるおいの数値が60点」だったとしましょう。同じ60点でも下記のような2つのパタンがあり得ます。
生まれつきかさつきにくいが、これまで気を付けてケアしてきた
生まれつきかさつきやすいが、これまでケアにあまり気を付けてなかった
DNAを調べることで、この違いを区別でき、別々の対応を取ることが可能となります。より進化したパーソナライズと言えるでしょう。
DNA検査を体験してみた
サービス開発の前に、まずは研究所が開発したプロトタイプの検査を体験してみました。
※この検査は、性別に関係なく18歳以上であれば受けることができます。
これは私の結果です。六角形のレーダーチャートが外側に行くほど各肌悩みになりにくい(逆に内側ほどなりやすい)ことを表しています。
私は生まれつき、シミにはなりにくいようですが、たるみとシワにはなりやすいという結果が出ています。子どものころからほっぺの肉が柔らかく、良く伸びるので友達に引っ張られてましたw。納得の結果です!
私はもともと「Tech大好きエンジニア」だったので、この結果に合わせて将来の顔を予測するような加齢シミュレーションなんかあったら面白いんじゃないか?なんて考えていました。
しかし、直後の興奮が冷めてきたころ、気づきました。今後歳を重ねるにつれ、たるんでシワだらけになってしまうのか・・・。そう思うと、歳とりたくないなあ・・・となんだか未来が暗いものに感じてしまいました。
「あれっ!そもそも、こんな体験を提供したかったんだっけ?」
美しく健やかな未来へ導くサービス
サービスのあるべき姿を模索すべく、社内の様々な部門からメンバーを集め、ワークショップを行いました。
いろんなアイデアや意見が出ましたが、結論としては、我々がやるべきは、「検査で終わるサービスではない」ということでした。
※ワークショップでも加齢シミュレーションは不評でした。「そっと画面を閉じました」「二度と見たくない」「これしか記憶に残らない」など。つくづくTech-Driven で考えるとダメだな、と反省。
DNAは残念ながら変えられません、しかし行動は変えられます。自身のDNAを知り、受け入れ、それに応じて行動を変えれば、未来も変わっていきます。一人ひとりがなりたい肌になる、心身ともに健やかな未来の実現、そのお手伝いをすべきであると。
そうやってできたのが、「Beauty DNA Program」です。Beauty DNA 「Analysis」ではなく「Program」と名付けたのも、このような意図があってのことです(資生堂インタラクティブビューティー内のコピーライターが考えてくれました)。
どうやって未来を変えるのか?
しかし、どうやって変えたらよいのか?
実は、研究所は肌のみでなく、血管、ホルモン、栄養にも注目して研究してくれていたのです!
Beauty DNA Programでわかる検査項目は下記3カテゴリの合計27項目もあります!!
肌体質(かさつきやすさ/にくさ、シワやシミのできやすさ/にくさ など)
肌レジリエンス力(保湿力、バリア力、抗酸化力 など)
ビタミン調整力(血中で各種ビタミンを調整する能力)
一般的なDNA検査でわかる肌体質だけじゃないところが最大の特徴です!
1. 肌体質
生まれ持つ肌の体質、肌ダメージのなりやすさ、現れやすさです。私の結果で説明すると・・・
シミにはなりにくい体質だが、たるみとシワにはなりやすい
特に目尻のシワが深くなりやすい
(シミ・シワ・くすみはこのように詳細な特徴もわかります)
私としては、「シワがあまり増えるといやだ、シワの少ない肌になりたい」と思いまして、肌レジリエンス力を見ていくと・・・
2. 肌レジリエンス力
ちょっと難しく舌かみそうな言葉ですが、肌の老化や悪影響に対する抵抗力を意味します。レジリエンスという言葉は、「困難をフレキシブルに乗り越える能力」として、最近ビジネスでも注目されていますね。
保湿力・バリア力・肌内部構造力・めぐりカ・抗酸化カ・紫外線防御力・炎症調整力の7種類がわかります。
シワに関係が深い、保湿力、バリア力、肌内部構造力のうち、特にバリア力が悪い、ということが判明しました(肌体質と肌レジリエンス力の関係もわかります)。「シワ」と聞くと肌の弾力だけが関係している、と思いがちですが、保湿力やバリア力も関係しているんですね!
したがって、化粧水と乳液をしっかり使用することが重要で、よりしっかりと保湿するためには、美容液やクリームがよいとのこと。しっかりお手入れします!
3. ビタミン調整力
血中のビタミン量を調整する力で、どんなビタミンを積極的にとるべきか?がわかります。
ビタミンAの調整力はMax!ですが、B6、B12、Dは左に振り切れてます・・・。この中でもシワに関連が深いのは、たんぱく質の合成を助けたり、ストレスの影響を和らげる効果のあるB6と12であり、それぞれバナナ、サバなどが代表的な食材とのこと。
青魚はもともと好きで、サバは普段からよく食べているので、バナナを毎朝食べるようにしました。
このように、肌体質だけだと、事実を突きつけるだけの「検査で終わるサービス」ですが、肌レジリエンス力とビタミン調整力がわかることで、自分が実現したい「心身ともに美しく健やかな未来」のために、どう行動を変えればよいのか?ががわかるのです。
そして、検査で終わらず、未来を変えるために、もう一つ重要なピースが・・・
パーソナルビューティーパートナーの寄り添い力
検査結果は研究所が開発したAIを使えば判明します。しかし、Beauty DNA Programでは、いわゆる美容部員であるパーソナルビューティーパートナー(PBP)が検査結果の説明やケア提案を行う「パーソナルセッション」もサービスに含むことにしました。
Beauty DNA Programは検査項目が多く、詳しくわかる分、正確に理解するためには、DNA・美容・ウェルネスなどの専門知識が必要となってきます。また、私みたいに結果にショックを受ける人もいます。思ってもいなかった意外な結果に戸惑う人もいるでしょう。
そんな時、必要なのはAIではなく人の力です。それも、専門知識があり人の気持ちに寄り添える人、それがPBPです!。PBPは一人ひとりの「美しくなりたい」という想いと肌に寄り添うパートナーですので、結果にショックを受けていたら共感し、励ましてくれます。いいところを褒めてもくれるんです。
PBPが担当するパーソナルセッションでは、スキンケアだけでなく、食事、睡眠、運動など総合的なアドバイスを行いますが、実行・継続できないアドバイスをしても意味がないので、普段の生活の状況などを聞きだし、一人ひとりにパーソナライズする形式にしました。
私の結果に対しても、最近眠りが浅いことを伝えると、
まくらに香り付きミストを噴霧する
寝る前にラベンダー、または、カモミールティーを飲む
眠りを誘うつぼを押す
などを教えてくれました。
睡眠をしっかりとらないと皮膚のターンオーバーが乱れ、肌のバリア機能(私が弱いところです!)が下がってしまうので、注意したほうがよいとのアドバイスも。
また、一人ひとりのなりたい肌に合わせた化粧品に関するアドバイスプランである「パーソナルビューティープラン」も発行します。
まさにAIと人との協働であり、資生堂の強みである「研究開発」と「パーソナルビューティーパートナー」を融合させたサービスとなりました。
これで、サービスの大枠が決まり準備が整いました。この後、2023年のテスト展開をへて、2024年の本格展開へとつながっていくのですが、そのお話は<後編>にて。
長文失礼しました。最後まで読んでいただき、感謝します